コラム

起業と人について


藤井 真人

株式会社レンガ
代表取締役社長

アントレプレナー

2015/10/07 15:19



株式会社レンガの藤井真人と申します。あずさ監査法人鈴木様よりバトンをいただきました。この度は貴重な機会を頂きましたこと深く御礼申し上げます。

 

株式会社レンガは「マンションノート」というマンションの口コミ・評価サイトを運営しております。2013年3月にサービスをローンチし、以降お蔭様で多くの利用者様にご支持頂けるサイトとして成長してまいりました。また過去には現在東証マザーズに上場している株式会社エニグモを創業し、創業より6年間取締役COOとして会社及び事業の成長に尽力しておりました。この2回の起業経験から私が起業をする上で大切にしたことを少しだけお話できればと思います。尚、本コラムでは(既に起業している方ではなく)起業に興味をお持ちの方/これから起業をしようと考えている方を対象としています。

 

起業で何が大切か、あまりにも多くのベンチャー経営者が仰っていることではありますが、それは「誰と夢を見るか」(人について)ということだと考えています。「誰」の対象は経営陣だけでなく社員も含まれます。

 

どのような仲間と一緒に旅をするかによって(同じサービスを展開していたとしても)進む道や速度、チームの雰囲気は大きく変化します。経営レベルの判断は勿論のこと、事業の日々の運営や細かなピボットもすべては人が行うものであり、あたかも水源から流れる水が様々な方向に幾度も分岐していくかのように、当初の事業アイディアが同一であったとしても数年経過すると会社や事業の姿が大きく変わっていきます。

また「人」の問題は組織の大小によって変わらない普遍的で重要な要素ではあるものの、創業期は人数やキャッシュも含めたその他リソースが圧倒的に不足しているため、人が与えるインパクトはより大きくなると考えています。

 

起業と人の関係について本格的に語りますとこのコラムでは到底書き切ることはできません。よって、本コラムでは私が特にポイントと考えている3点のみお話できればと思います。

 

1つ目としては、そもそも論として「1人で起業するのか、仲間と一緒に歩むのか」という最初の分岐になるかと思います。これは起業家の性格や考え方、志向性により異なるため正解はありません。ただ、私個人の意見としましては1人ではなく仲間と一緒に歩むことをお勧めします。

1人で創業することにより、「初期のキャッシュを押さえることができる」「判断を完全に自分1人で素早く行うことができる」「失敗時に受けるダメージの総量が小さくなる」等の利点があります。

一方、創業期には色々な困難が待ち構えている中、仲間がいることにより「議論を行い諸々の考えを強化できる」ことで成功確率を(一般的には)上げることができます。また仲間がいれば「困難な壁に直面した時に一緒に悩む / 何かを達成した時に一緒に心から喜ぶ」こともできます。前者に関しては「信頼できる外部の方にアドバイザーになってもらえばよい」という考え方もあるかもしれません。これは一理あるのですが、外部の方がご助言くださるのとフルコミットしている内部メンバーの議論により考えを強化していくのでは、得られる果実の種類が異なります。また後者に関しては、外部の方がどれだけ信頼でき近しい方でも内部メンバーと同じ気持ちになることは難しく、日々一緒に厳しい戦いをしているからこそ感情を分かち合うことができるという特徴があります。そしてこのような日常的に感じるメリットだけでなく、例えば別の視点として体調不良などの不測の事態が発生しても「もう1人がセーフティネットの役割を果たす」こともできます。以上のような観点から1人ではなく複数人で起業するメリットは大きいと考えています。(尚、本コラムでは触れませんが人数によってもメリット・デメリットがあるということも考えるべき要素として残っています)

 

2つ目としては、(仲間を選ぶ基準として)「人として誠実で信頼できる人間を選ぶ」ことが重要であると考えています。

不誠実な人を敢えて選ぶ人はいないかと思いますが、きちんと誠実な仲間を得ることは非常に難しいことでもあると感じています。また、これは能力以上に重要な視点であると考えています。能力が優れていたとしてもこの点で少しでも疑問が残る場合は、中長期で何らか問題が出てくるケースがあります。ITベンチャーで散見されるパターンとしては「挑戦したい事業アイディアはあるけど、自分は開発できない」という状況下において、起業時もしくは創業初期に外部から知らない開発者を役員や高い役職として採用する際に発生するリスクがあります。レジュメ上の情報と数回の面接及び会食だけではなかなか相手の人格を理解することは難しく、一方創業者にとってはサービスを立ち上げる上で緊急性が高い領域であるからこそ、対象者の高い能力部分にのみ目が行ってしまい後悔することがあります。また、少し引いた視点としましては(企業の規模の大小を問わず)経営をしていく上ではコンプライアンス意識や倫理観が必須となります。ただ、そもそも人は根幹となる人格や考え方はそれほど変わらないものであり、役職が与えられたからといって(コンプライアンス意識が多少芽生えることはありますが)今までの人間性が大きく変わるということはありません。能力の向上は適切な訓練で可能ですが、この人格の問題はなかなか改善が難しいものです。そうなりますと(能力レベルを妥協して良いということでは一切ありませんが)最初に仲間になる時点で「ちゃんと誠実で信頼できるかどうかにこだわること」は大変重要な点になると考えています。

 

3つ目としては、「志を同じくしてよく働くことができる仲間かどうか」ということです。

ベンチャー企業の創業期は人・モノ・金で考えますと「人だけある(人しかない)」という状況が一般的です。しかもごく少数の仲間で事業を立ち上げ、それを徹底的に磨き上げていくということになります。昨今はシード段階でベンチャーキャピタルから増資をしてもらうケースも多くあるかと思いますが、それでも予定通りに人員採用が進まず(質にこだわり人員が拡大できず)、かといって創業期から大々的な広告宣伝費にかけるというのも失敗する可能性が高く、結局しばらくは限られた仲間(もしくは主要メンバー)で一定レベルの事業規模まで持っていく必要があるケースが多々あります。どちらのケースであったとしても創業期のメンバーは、その唯一持ちうる、そして唯一自由にコントロールできる労働量に頼らざるを得ない部分があります。創業期において、強制ではなく自律的にモノを創り上げていくことに楽しみ、仲間と共に仕事に打ち込むことにできる人かどうかは1つのポイントであると考えています。創業期に総量としての仕事量が多いから必ず成功するということではありませんが、中長期で成功している多くのベンチャー企業の創業期は皆よく働いているという印象を受けています。

 

起業を取り巻く環境は私が約10年前にエニグモを創業した時とは様変わりし、資金調達側面を中心に起業自体のハードルは大きく下がっていると思います。志を同じくした仲間と自分達が感じている社会課題を解決しようと挑戦することは素晴らしいことだと考えています。起業を志そうと考えていらっしゃる多くの方々の中で、1人でも本コラムが何か考えるきっかけのようなものとなれば幸甚です。

 

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