コラム

ベンチャーキャピタリストという生き方


竹川 祐也

株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ
ヴァイス・プレジデント

VCキャピタリスト

2013/06/12 15:42



【ありがとうございます】

勝屋久事務所/プロフェッショナルコネクターの勝屋久さんよりコラムのバトンを頂きました竹川です。勝屋さんとは誕生日が同じ(!)、だけでなく、ひととひとをつなぐことに喜びや価値を感じるところなど、多くの共通点があり(生意気言ってすみません)、ご縁を感じております。これからも長くお付き合い頂ければと思います。今回もこのような機会を頂きましてありがとうございます!



【いま取り組んでいること】

私がサイバーエージェント・ベンチャーズに入社したのは2012年11月。以来半年でサポーターの方も含め500名以上の方とお会いし、うち100社近くのスタートアップ企業の経営者、起業家候補の方と実際に面談させて頂いております。そのなかで幸いにも今春Language Cloud, Inc.へ出資するにいたり、支援させて頂くことになりました。現在Co-CEOであるJohnとBillyのMartyn兄弟、そして強力なチームとともに新しい語学教育のグローバルプラットフォームをつくるべく奮闘しております。これからも、世の中の大きな課題や大きな不満を解決するために挑戦をする、強い動機と覚悟を持った起業家や起業家候補の皆さまを応援していきたいと思います。



ベンチャーキャピタリストとしてのスタートアップ支援のほかに、事業会社とベンチャー企業の共創を進めていきたいという思いからCROSSOVERという招待制イベント/コミュニティを立ち上げています。第一回はキーノートスピーカーに元Google日本法人代表、現アレックス株式会社代表の辻野様をお招きし、参加者としては事業会社のキーマンや注目の起業家など総勢40名の方にお集まりいただき、熱く濃いセッションとリラックスした雰囲気のなかで積極的に交流が行われました。このイベント/コミュニティはCROSSOVERの名の通り、異なる文化、異なる価値観、異なる事業、異なる地域など、距離のある(ように見える)事象を掛け合わせることでそれぞれの価値を昇華させ、新しい付加価値を世の中に生み出し、良い方向へ世界を変えていく場として醸成していきたいと思っています。私自身は、ひととひとをつないでいくこと、HUBとなる動きに徹し、スタートアップだけでも大企業だけでも為しえない”革新”を生み出していくきっかけを少しでもご提供できればと考えております。ご興味がおありの事業会社の皆さま、スタートアップの皆さまはぜひ個別にお声掛けください。



【なぜベンチャーキャピタリストか?】

いま、私はベンチャーキャピタリストを一生続けていきたいと考えています。

その確信、覚悟に至るには、紆余曲折がありました。



CAVに入社する前、5年半ほどベンチャー企業に在籍していたのですが、後半2年ほどは社長をつとめていました。このベンチャー企業は最初IPOを目指していたものの叶わず、上場企業のグループ会社へ売却することとなりました。そして創業者が抜けた後、再度成長路線へ乗せるべく私が代表を引き受けたわけですが、親会社の期待には応えることができず会社は吸収されることとなり、経営責任を取る形で退任することとなりました。

この会社には2007年に経営企画室長として参画しましたが、財務、経理、人事、総務、法務、など時と場合によって役割と守備範囲を変えながら(濃淡こそあれ、システム開発と給与計算以外は携わったかもしれません)働いていました。平たく言えばCFO+何でも屋という感じでしょうか(笑)。ただ、基本的に会社の成長に貢献すべくコミットしていましたので個人的には役割やタイトルにこだわりはありませんでした。このときベンチャー企業の管理体制をいかにつくっていくか、成長とともにどういった問題が起こってくるのかを、見聞ではなく自分の肌で感じることができたのは、何よりも得難い経験だったと思います。

一度は外部から資金調達をし(シリーズA)、上場準備に取り掛かる段階までは進みましたが、様々な要因で断念、リストラクチャリングや株の買戻しを経て、数社の買い手と交渉をしながら、某上場企業の連結子会社となるに至りました。リストラで体脂肪率ゼロに近いほど筋肉質にした後は、いかに収益を増やすかしかありません。再度成長路線に乗せるべく代表取締役社長としてのチャレンジがはじまりました。本当に良い経験をさせて頂いたと思っていますが、当時周囲の友人からは「もうIPOの可能性もない会社になぜ残るの?」と言われたことも覚えています。そのタイミングで具体的にいくつか転職のお誘いを頂いたりもしたのですが・・・。

なぜ残ったのか。その答えのひとつは、自分が一度は選んだ会社、主要な経営メンバーがすべて抜けてしまったとはいえ、この仲間ともう一度会社を成長させたい、という責任感と意地だったと思います(もちろん新しい株主に報いるというのが大前提で)。あの大震災のときも、私はオフィスにいましたが、瞬時にこの仲間たちの命さえも預かっているのだと実感したことを覚えています。いざというときは、本当に自分の命も捨てなければならない、と(大げさかに聞こえるかもしれませんが、同感して頂ける経営者の方も多いのではないかと思います)。クルーズ船の事故で船長が真っ先に逃げ出した、というニュースも昨年ありましたが、あれほど格好悪いリーダーはいません。ただ、自分が同じ立場だったとして、自分の命を最も軽く考えることができるか。私はそうありたいと願います。

会社に残ったもうひとつの理由は、やはり社長を経験するということを自分にとっての新しいチャレンジと捉えられたということです。雇われ社長、ではなく、設立出資を受けて新たに起業をするのだ、と解釈をすれば前向きにトライできる、と当時は考えていました。随分贅沢な起業ですが(笑)。

社長就任後は、社員全員と会議室で弁当を食べながら経営理念について議論をし、その刷新をすることから始めました。新たな経営理念を策定し、会社としての目指すべき方向と行動指針という土台を固め、新規事業開発やM&Aなどのチャレンジも進めました。しかし主力事業の落ち込みを補うほどの事業を育てることが出来ず、再び会社を成長軌道に乗せることはできませんでした。

離れて1年。なぜあのとき失敗したのか、自分なりにいまは整理できている部分もありますが、当初はなぜやろうとしていることができないのか悩むばかりでした。誰かに相談して解決する問題でもなく、経営者の孤独とはこういうものなのだな、と悟りました(寂しいわけではない)。経営者も起業家も結果が伴わなければ、数字を伸ばせなければクビになっても仕方がない。何かあったらすべてに責任を取らなければならない。そういった覚悟が必要なのが起業家であり、経営者なのだということを理解しました。

だからこそ、誰に何を言われても、もっと世の中を良い方向に変えたい、この不便を無くしたい、この満たされていないニーズに応えたい、と”覚悟を持って”チャレンジをしている起業家や経営者を私は尊敬します。正直、ここで”割に合わないな”と思うひとは起業家や経営者の道は向いていないのかもしれません。もちろん起業家を目指すことをむやみに煽るつもりはありませんが、世の中の満たされていない大きなニーズを満たす、課題を解決するという”覚悟”を持っているひとのチャレンジは全力で応援したいと思います。

話を戻しまして、退任が決まってからCAVに入社を決めるまでの2か月間。ベンチャー企業1社にどっぷり入り込みCFOなどの経営幹部として役割を全うするか、数多くのスタートアップの成長のきっかけをつくるベンチャーキャピタリストとして駆け回るか、最初はそのどちらかで次の仕事を決めようと考えていました。退任を表に出せないため、大っぴらに転職活動もできず、旧知のベンチャーキャピタリスト、起業家、人材エージェント、記者といった方の力を借りながら、20社ほどのベンチャー企業経営者とお話をさせて頂きました。この時期に快く協力して頂いた皆さまにはいくら感謝してもしきれません。

そして10月も最終週、人生初の無職期間に突入する覚悟をしていた頃、ある有力ベンチャーキャピタリストから起業家を紹介して頂きました。月曜日にお会いして意気投合すると、その金曜日にはチームメンバーのほぼ全員の方とお会いさせて頂き、ほぼ参画する方向に気持ちが傾き始めていた矢先、、、CAVの田島からも一緒にやらないかという話が来たのでした。前々職の出資先で唯一IPOを果たした某社をCAの一キャピタリストとして担当していたのが現CAV社長の田島でした。その縁もありCAVの投資先でCFOは必要ないか? と相談していたのですが逆にキャピ タリストとして声を掛けてもらい、最終判断待ちという状況でした。

本当に悩みました。一週間でもずれていれば、どちらかに決断することに迷いはなかったかもしれません(タイミングって難しいし恐ろしい・・・)。そして、性質の異なる二つの仕事について可能性を考えるなど、自分の人生に覚悟を決められていなかったことにも気づかされました。

上述のベンチャー企業はベンチャー界隈の方であれば誰もが知っている有望な会社です。おそらく数年でIPOも実現されるのではないかと思います。何より彼らが思い描く世界観が達成されることでより良い世の中をつくることができる、多くのユーザーさんに貢献できるのは魅力的でした。その屋台骨を支え、そこに骨をうずめるという考え方がある一方で、彼らの立ち上げ初期、手探りで経営を模索していたようなときに、誰かがもっと早くサポートできなかったのだろうか? とも思い及んだのです。これから成長していく可能性を 持つ、生まれたての、または生まれようとしている無数のスタートアップを支援することが出来れば、間接的ではあるにせよ、さらに多くの点で、世の中を良い方向へ進めるお手伝いができるのでは、と思ったのです。最後はそれが判断の決め手になりました。私の多くの失敗経験とほんのわずかな成功体験や幅広い業務の経験、信頼できる人的ネットワークを活かし、できるだけ”多くの”起業家の歩み出しをサポートし、それを通じていまの世の中や次の世代に貢献したい、と。これができるのはベンチャーキャピタリストしかない、と。それが最終的にベンチャーキャピタリストという生き方を選択した理由になります。

繰り返しにはなりますが、私の使命はより多くの有望なスタートアップを生み出す現場にいつづけ、自分の失敗体験や成功体験から得られた知見を糧にして、起業家の皆さまやスタートアップ/ベンチャー企業の成長を支えることになります。これからもこの気持ちを忘れずに、起業家の皆さまと、同じ目線、同じ責任感を持って共闘できる、泥臭いキャピタリストであり続けたいと思います。


竹川 祐也

株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ
ヴァイス・プレジデント

株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ ヴァイス・プレジデント
証券会社・人材紹介会社を経て2004年証券会社のベンチャーキャピタル部門へ。2007年ベンチャー企業に入社しCFO・CEOをつとめたのち、2012年株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ入社。現在はベンチャー企業での経営経験を活かしながらベンチャーキャピタリストとして多くのスタートアップ支援に携わる一方、大企業とベンチャー企業の共創を目指すコミュニティ”CROSSOVER”を運営中。
1975年広島生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。


Comment_u