コラム

聞き手を動かすプレゼンの極意


伊藤 羊一

プラス株式会社
ジョインテックスカンパニー執行役員ヴァイスプレジデント

CVC、事業会社

2014/10/01 14:00



オプト菅原さんからバトンを引き継ぎましたプラス株式会社の伊藤羊一です。

ジョインテックスカンパニーにおいて、執行役員ヴァイスプレジデントとして経営に携わり、既存事業をマネジメントし成長を目指すとともに、新規事業立ち上げなど事業構造の変革にチャレンジしています。

弊社は、文具・事務用品、オフィス家具の製造業であり、かつ、私がおりますジョインテックスカンパニーにて、国内の文具事務用品販売店様をパートナーとし、営業力を活かしたオフィス用品流通を担っております。これまで順調に事業を成長させて参りましたが、今後は、国内の生産年齢人口の急激な減少によりオフィス用品市場は縮小が見込まれ、またタブレットなどの浸透によるペーパーレス化の影響で、既存オフィス用品ニーズは減少が見込まれるなど、国内でのビジネス環境はますます厳しくなっています。

そうした中、私どもでは、新しい商材、サービスを積極的に取扱うべく、これまでに、ベンチャー企業数社と事業提携を行って参りました。また、事業提携を強化する目的で、2014年2月に、印刷のベンチャーであるラクスル様との資本提携も実施いたしました。

こうした提携を模索する上では、投資家の方々と同様、ベンチャー企業が何を目指し事業を行っているか、知る必要があります。ウェブで学び、イベントでの展示で知るとともに、ピッチイベントに出席して起業家のプレゼンを聞くことが増えて参りました。トーマツベンチャーサポートさんが主催されているモーニングピッチにて、定期的にプレゼンを聞いていたほか、最近ではKDDI ∞ Laboにメンター企業として参加させて頂いており、先日も、沢山の応募者プレゼンを拝聴いたしました。

起業家の方々には情熱的で、こちらがわくわくするプレゼンをする方が沢山いらっしゃいます。成功しつつある起業家の方々のプレゼンは、大抵、ものすごく説得力があります。しかしながら、何を訴えたいのかそもそもよく分からないプレゼンや、そのサービスの何がすごいのか、さっぱりイメージできないプレゼンをされる方も、残念ながら、沢山いらっしゃいます。

私自身、起業家のプレゼンに限らず、ビジネススクールの講師として受講生のプレゼンを聞いたり、またこれまで、自分が行ったプレゼンの絶対数も多く、経験を積んだ者としてアドバイスできることがいくつかあります。そこで、これを読まれている起業家の方々に向けて、私が常日頃意識している、「プレゼンテーションの極意」について、書くことにします。



■プレゼンは、何のためにする?

まず、プレゼンの目的は何でしょうか。これを意識できていない方が、案外、沢山います。ぼそぼそと話し、一体何をしに来たか分からない方。サービスに自信を持つのはいいのですが、中途半端なプライドが邪魔をして、「聞く人が分からなくてもいいのだ」と言わんばかりのプレゼンをされる方。また、流暢だけど、後から振り返ってみると、内容が思い出せない。そんなプレゼンをされる方もいます。全て、失格です。

プレゼンは、「相手を動かす」ために行うものです。5分なら5分、10分なら10分、時間を使って終わり、話をして終わり、存在感を示して終わり、ではありません。ウケをとって終わり、でもありません。また、話を理解してもらって終わり、でもありません。

聞き手が、自分の望む方向に動いてもらって初めて、プレゼンの目的を達成します。特に起業家の方に与えられる時間は、多くありません。大抵、5分以内だったりします。その短い時間に、自分の作るサービスのコンセプト、誰の何を解決するか、強みや弱点を聞き手に理解したもらった上で、聞き手が、望ましい方向に行動を移すことが、そのプレゼンの唯一の目的です。

聞き手が投資家なら、投資を決めること。または、投資する前提で話を更に聞きたい、と思わせること。聞き手がユーザーなら、そのサービスをすぐにダウンロードすること。聞き手が従業員なら、プレゼン後、直ちに行動に移すこと。

それができなければ、どんなに流暢なプレゼンをしても、どんなに笑いをとったとしても、そしてどんなに力強く「世界を変える!」と宣言しても、全く意味がない。まずはそれを強く意識することが大事です。

つまり、聞き手に「何を訴えよう」、では全く不十分なのです。プレゼンによって聞き手がどう動いて欲しいのか、そもそも聞き手は何者で、どういうことに興味があるのか。どうしたら動くのか。徹底的に分析し、聞き手視点に立って「動かす」ための手段としてプレゼンを考え、作っていくことです。



■では、聞き手が動く、ためにどうするか?

1)スッキリ・カンタンにする


聞き手が「動く」ためには、まずは、プレゼンが理解されなければ始まりません。すっと聞き手が理解するためにはどうするか。まずは、プレゼンをスッキリ、カンタンにすることです。

スッキリさせるためには、ごてごて、文字を並べない。聞き手に理解して欲しいために、つい、沢山の言葉を並べて資料を作り、沢山の言葉で話したくなりますが、それを徹底的に排除する。例えばパワーポイントやキーノートで使う文字量は、可能な限り少なくする。すっと聞き手が頭の中に入る文字量にすることです。話す上でも、不要な言葉をベラベラ言わないことです。必要以上に言葉を並べると、聞き手の頭がオーバーフローします。

カンタンに、とは、誰でも理解できること。テレビのニュース番組は、「中学生が理解できるレベル」で番組を作る、とディレクターの方から聞いたことがあります。プレゼンも同じ。中学生が聞いても、分かるレベルの平易な言葉を使うこと。これが意識的にできれば、だいぶ分かりやすいプレゼンになります。



2)ストーリーで語る

プレゼンが理解しやすくなったら、次は、聞き手に興味を持ってもらう必要があります。そのためには、ひとつひとつの表現がストーリーでつながっていることが重要です。

ストーリーで語る、とだけ聞くと、難しそうです。それができれば苦労しないよ、と仰る方もいるかもしれません。芸人さんが、「○○でな、○○したらな、○○になってん!」と流れる口調でまくしたてる、あの感じを出せれば、聞き手もどんどん引き込まれるのですが・・・それはなかなか難しいでしょう。

でも大丈夫。芸人さんのように話さずとも、表現と表現を、しっかりと「つなぐ」ことで、プレゼンはストーリーになります。

では、「つなぐ」とは、どういうことでしょうか。

まず、プレゼンは、必ず、主張があります。そして、その主張(言いたいこと)をサポートする、根拠があります。

主張と根拠が、「〜だから、〜である」と読んでみて、意味が通じる状態になっていること。これが「つながっている」ということです。

例えばの話をしましょう。

ダイエットをすべきである、というプレゼンがあります。

主張は、「あなたはダイエットをすべきである」です。

根拠は例えば、「ダイエットをしないと健康に悪い」「ダイエットをすれば運動が楽しくなる」「糖質を抜けば、カンタンにダイエットができる」といったことでしょうか。これを、「〜だから、〜である」で、主張と根拠をつないでみます。

それぞれ「ダイエットをしないと、健康に悪いから、ダイエットをすべきだ」「ダイエットをすれば運動が楽しくなるから、ダイエットをすべきだ」「糖質を抜けば、カンタンにダイエットができるから、ダイエットをすべきだ」となります。意味が通じますね。これが、つながっている状態。すなわち、ストーリーになっている、ということです。難しい言葉で言えば、「論理的である」ということです。

一方、「ダイエットをしても、効果がある人とない人がいる」と、主張をつなげてみてください。「ダイエットをしても、効果がある人とない人がいる。だから、ダイエットをすべきだ」。意味が通じませんよね。これは、ストーリーになっていないわけです。この例のようなケースが、現実には沢山あります。

ものすごく簡単な話です。話と話を「〜だから、〜である」とつなげて、意味が通じているかどうか、これだけです。



3)情熱と自信をもって

さあ、聞き手は、あなたのプレゼンを理解し、興味を持ちました。あと一歩です。

あと一歩で、聞き手は、あなたがそうなって欲しい、と思う方向に、動きます。

人が動くために一番必要なこと。これは、プレゼンターに情熱があること。そして、自信を持っていること。必要なのは、この二つです。

情熱がない人の話を聞いても、聞き手が動かされることはありません。そして、プレゼンターに自信がなければ、その話がいかに正しくても、信頼されることがありません。

では、情熱と自信、という、当たり前のことをどうやってプレゼンに込めるのでしょうか。つばを飛ばしながら、大きな声で話せばいいのでしょうか。

もちろん、大きな声も時に必要だし、つばが飛ぶくらい一生懸命話すことも、あってもいいかもしれません。

ただ、私が言う情熱と自信は、非常に簡単なことです。

情熱があるか、とは、そのプレゼンのテーマ、または対象となるもののことを、あなたが世界で一番好きかどうか、ということです。アントレプレナーのプレゼンが時に感動的なまでに情熱的なのは、そのサービスやプロダクトのことが好きで好きで、おそらく世界で一番好きだから、という感じに満ちているからです。逆にいえば、そのくらい好きでなければ、そのサービスを勧めても、動かされる人はいない、ということです。

そして、プレゼンに自信を持つとは、単純に、練習すること、それだけです。練習すれば、必ずプレゼンのスキルは上がります。そして自信がつきます。私は人前で話すのが苦手だ、という方がいますが、それは、単に練習が不足しているだけの甘えです。どれだけ、声に出して練習して言っているのでしょうか。

私は、ソフトバンクアカデミアという、孫正義社長が校長となり自分の後継者を育成する機関で、孫校長の前で何度もプレゼンをしてきました。あるプレゼンでは、30名くらいのプレゼンターの中から、「伊藤くんって面白いね、事業を任せてみたいね」と名指しでいわれましたが、このプレゼンをするにあたり、5分のプレゼンで、300回ほどリハーサルをしました。そのくらい練習すると、自然と自信をもってプレゼンできるようになります。たった25時間(=5分×300回)です。それだけで、誰でも、自信を持ってそのプレゼンすることができます。才能ではありません。練習のみです。

スッキリカンタンなプレゼンで聞き手に理解してもらい、ストーリーで語って聞き手に興味をもってもらい、情熱と自信をもって、聞き手を動かす。これが、プレゼンテーションの極意です。



■最後に

ビジネスというのは、最後は必ず人と人との関係、コミュニケーションに行き着きます。人に何かを伝える、ということをしっかりできるかできないかで、結果は全く、異なってきます。

皆さんもぜひ、伝えることの重要性を意識頂き、ビジネスの成果に結びつけて頂ければ、と存じます。

プレゼン等のビジネススキルでニーズがあれば、いつでもサポートさせて頂きます。

皆さんの今後のご活躍をお祈りしております。

 

 

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伊藤 羊一

プラス株式会社
ジョインテックスカンパニー執行役員ヴァイスプレジデント

東京大学経済学部卒。日本興業銀行から2003年プラス株式会社ジョインテックスカンパニーに転じる。興銀では、企業金融、金融法人営業、国際業務企画、証券化、事業再生支援に従事。プラス株式会社では、流通カンパニーにて、ロジスティクス企画運営、グループ事業再編、マーケティング・営業統括にて、同社成長に貢献。2012年11月より現職、事業全般を統括しながら、新規事業開発を主導。サービスビジネス展開を検討する上で、ベンチャー企業との連携も推進。グロービス経営大学院客員教授。ソフトバンクアカデミア一期生、KDDI ∞ Labo 第7期メンター。


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