コラム

B2Bビジネスの考え方


北村 彰

株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
代表取締役

アントレプレナー

2014/09/03 14:00



私がB2Bビジネスの経験者であるためか、あるいは、VCキャピタリストにITのB2B経験者が希少だからでしょうか。起業家やStartupsからたびたびB2Bビジネスの相談を受ける機会があります。今回のコラムでは、これまで相談者にお話しをしてきたB2Bビジネスの考え方、基本についてお話しをします。



業種・業態によりお客様の求めるものが異なる

お客様が何を求めているのか、何に困っているのか、お客様の立場に立って使い方を理解し、営業戦略や営業戦術を計画・実行することは、B2BだけではなくB2Cの場合も基本です。

B2Bの場合、不動産、建設、アパレル、医薬品、日用雑貨、食品、機械部品など、業種によって営業や商品は異なり、販売チャネル、利益構造、管理する対象、生産、物流、ワークフロー、経営課題などに特性があります。まずは、各業種の特性を把握し、そして、皆さんの販売する製品・サービスが効果を出す業務と利用方法を調査・分析し、販売のポテンシャルを把握することが大切です。



ビジネス対象のマーケットを定義し分析する

業種の特性とそのポテンシャルを把握・整理できたら、次は目標とする業種を定義します。私が過去に参画した事業において、1990年 オラクル社立上げ時には51業種、2000年 セールスフォース・ドットコム社立上げ時は21業種を定義しました。それぞれの業種における上位企業から会社名を列挙していきマトリックスを作成します。オラクル社では上位5社の大手をターゲットとし、セールスフォース・ドットコム社では上位10社に広げ中堅クラスもターゲットとしました。はじめの販売・導入先は、リストアップした上位5~10社の一つの部門になりますが、その後、その部門で実績を上げ評価をいただくことができれば、他部門への横展開が可能となります。一つの部門から他部門への展開、さらには子会社、グループ会社へとアプローチは数年におよぶこともあります。どの部門を最初の狙いとするかは前述の業種特性分析により定まります。

対象とするマーケットを見える化せず頑張っている人がいますが、B2Bであればまずは対象を把握すべきです。『製品が売れないのですが、なぜ売れないのでしょうか?』『どうしたら良いのか教えてください。』というご相談を受けることがあります。このような場合、次のような質問を投げかけるのですが、残念ながら明確に答えられないケースが非常に多いです。

-売りたい業種、地域はどこですか?

-対象になる企業は何社ありますか?

-対象となる企業でリプレースが可能な会社は何社ですか?

-対象企業のシステム利用社数、メーカの内訳をご存知ですか?

-対象企業のチャネルマップはありますか?



自分のマーケットを把握せずに毎日忙しくしていても売ることはできません。狙いとするマーケットを正確に把握し戦略に必要な情報を入手することが大切です。



ソリューションを作る

製品=ソリューションではありません。ソリューションの一つは、お客様の立場に立って作るもの、お客様が理解できるものであり、導入の意志決定ができるものです。このフェーズを販売ソリューションとします。もう一つのソリューションは、導入の意志決定後から実際の導入、稼働、評価、社内展開のプロセスで、こちらを導入ソリューションと呼びます。

この二つのソリューションによりお客様は『自社の困っている大きな課題を解決することを理解』し、そして、『導入・稼働への不安を解消すること』ができます。製品の性能や機能、良さだけを説明・デモしたところでお客様には理解ができません。特にクラウドサービスはエンドユーザが直接、意思決定や導入を行うため、このソリューションが不可欠になります。



1. 販売ソリューション

販売ソリューションは、お客様の最重要課題、解決の仕組み、マネジメント評価内容で成り立ちます。これらはお客様固有の用語で書かれ、内容は当然ながら業種により異なります。もし、あなたが担当するお客様が、社内で問題を抱えていたり、上層部から呼び出しを受けていて、自社の問題や課題に頭を痛めている状況であれば、このソリューションは救世主になります。

『実は今この問題を議論しています。』『今朝、社長からこの課題を受けました。』と聞いたときはチャンスです。お客様と一緒に問題解決にあたることで、信頼獲得の機会が得られ、お客様との距離はぐっと近くなります。

販売ソリューションは購入意志決定、発注までのプロセスになります。会社という組織の中で、社内コンセンサスを得て、根回しをし、稟議を上げ、意思決定者を味方にするなどのプロセスをお客様に理解してもらい、このプログラムを一緒に実行すること、そしてまた、これら一連のプロセスをお客様と共同実行することもソリューションに含める必要があります。セールスフォース・ドットコムを立ち上げた頃、当時扱っていたものはCRMシステムでしたから「営業と顧客の管理」と思い込んでいましたが、ある食品会社とのご縁から新しい発見がありました。この会社では、キャンペーンや特売品の生産・物流の最適化について課題を抱えていました。母の日や雛祭りなど短期間の単発商品は、最適な生産計画、物流でなければ、本来利益を生み出すはずのキャンペーンが赤字となってしまう可能性があります。この時はCRMシステムを生産計画に適用し、幸いにしてこの経営課題を解決することができました。システム部門ではなくエンドユーザ部門の方にお会いすると、業種特有の現場の経営課題を聞くことができ大変参考になります。同様に他の業種で適用例を考えてみると次のようなものがあげられます。こうしたものを業種毎にまとめ標準提案書にすると、これがソリューションになるのです。

-人材派遣会社:    人材の応募から面接、派遣、派遣後のフォローのプロセス管理

-ビル賃貸会社:    部屋、ビルの賃貸管理と稼働管理

-英会話学校:     どの教室でも可能な生徒の会費、入金、受講数管理

-工作機械メーカー:  販売した工作機械の稼働、故障、ソフトのバージョン管理

-飲料メーカー:    自動販売機の設置候補地から交渉、契約、設置、稼働の管理

-設備会社:      営業と工場がキャッチボールできる見積りシステム

-グローバルに多くの支店を持つ会社の経理データ収集と経費管理

 

ところで、この段階でデモンストレーションを行うケースがありますが、見せる内容の順序を工夫しましょう。退屈な入出力や操作など機能紹介のデモは後回しにして、最初に効果の高いデモから入ります。具体的には、マネジメントが日々のオペレーションで意思決定やPDCAに利用するアウトプットをまずは見せるのが良いでしょう。または、会社のトップが一番関心の高いテーマを数値化して見せます。そのアウトプットは現状の大きな課題を解決し、意志決定に有効な数値、表、グラフであることが望ましいです。当然ながらアウトプットにはお客様の商品、部署、得意先など実データを用いないと信憑性がなく理解は得られません。このようなデモの作成は、お客様の協力と信頼がなければ作成はできません。



2. 導入ソリューション

導入を検討しているお客様から相談を受けたことがあります。『エンドユーザ主導で導入、稼働できるだろうか?』『皆が利用しないと意味が無いのだが、果たして使いこなせるだろうか?』『IT音痴の課長や部長が毎日利用するだろうか?』

購入意思決定における次のステップは、お客様のこうした心配を取り除くことです。これが導入ソリューションです。お客様の不安を取り除くためには、導入→稼働→展開のプロセスとサポートを提示します。そして、提示側はこのプロセスを実際に経験し、プロセスで利用するものをキット・ツール化します。これらのキット・ツールは、現状調査から始まり、関係者のコンセンサスを得る仕組みと文書、操作教育のマニュアル、意識改革のセッション方式、トップへの報告書例などです。お客様は、自分やサポートの役割とすべきこと、計画表、メール文書、調査票などのフォーム、事例などが明確となることで安心して導入を決定し、一歩を踏み出すことができます。この導入ソリューション開発のためには、Betaユーザや初期ユーザの経験を元にして、要件定義から稼働・展開までを徹底的に洗い出し、その経緯の評価を行う必要があります。クラウドサービスの場合、その導入作業はエンドユーザ主体で行われます。そして、システム導入経験の少ない方が担当されることも多いため、このプロセスのツール化は非常に重要であり、お客様の信頼を得ることにもつながります。

また、導入のプロセスをしっかり経験することは、先述の販売ソリューションの改善にも生かされ、皆さんの会社のスキルを大幅に向上することができます。そのため、できれば初期ユーザにお願いして、これらの経験とスキルアップを実行できると良いでしょう。



おわりに

販売ソリューション、導入ソリューションは販売することができます。複数のお客様で実践を繰り返し、自信を持って提供できるものであれば、販売も可能です。ソリューションを自社のサービス製品とすることにより、ブランド化、可視化、モノ化でき、そしてそれが企業の信頼につながります。さらに、これらソリューションはチャネル販売をする場合にとても重要なキットツールとなり、チャネルを戦力化することができます。



筆者による今後のコラム予定内容 (掲載時期は未定)

・Betaユーザ、初期ユーザ  -極めて重要なステップ-

・チャネル販売  -チャネルの生態、期待とリスク-

・B2B営業とは  -プロセスと標準化、スキルアップ、評価、リーダの役割-

・お客様サポート  -資産化、すべての入口-

 

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北村 彰

株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
代表取締役

日立でSEとしてメインフレームの開発に携わり、その後日本IBMに13年間在籍し、プロダクトマネジメント、営業、副社長補佐など数多くの経験をする。1991年より日本オラクルの立ち上げに参画、製品開発、OEM事業などを担当し日本全国、海外で活躍する。
1994年 日本グプタを設立(イーシステム/ヘラクレス上場。現社名:キヤノンエスキースシステム)、そして2000年 セールスフォースドットコムを設立、それぞれ社長を務め、CRM市場の拡大発展、クラウドサービスの幕開けに貢献する。

これまでのベンチャー企業立上げや事業再生、IPO経験を活かし、現在は、サンブリッジグローバルベンチャーズにおいて、数多くのベンチャー企業へ投資や経営のサポートを行う傍ら、特定非営利活動法人Japan Venture Researchの代表理事、そして、株式会社ジャパンベンチャーリサーチでは、ベンチャー企業が成長するために必要なエコシステムを実現するために「entrepedia」(アントレペディア)のサービスを開始し、ベンチャー企業とベンチャーを支援するベンチャーキャピタルや大手事業会社とのネットワーク作りを目指して事業を行っている。


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