コラム

BASFにおけるCVC活動と日本への期待


斉藤 浩樹

BASFジャパン株式会社
経営推進本部 BASFベンチャーキャピタル  シニアマネージャー

CVC、事業会社

2014/07/23 14:00



Nittoの宮澤さんからバトンをいただいたBASFジャパン株式会社の斉藤です。BASFグループのCVCであるBASFベンチャーキャピタルで日本を担当しております。BASFはドイツに本社 (BASF SE)を置く化学会社ですが、馴染みのない方もみえると思いますので、本稿ではBASFグループにおけるCVC活動を主に紹介させていただきたいと思います。

 

BASFはグループ全体で約11万人の従業員を擁し、世界中でビジネスを展開しています。その化学製品は、ほぼ全ての産業でお使いいただいております。イノベーションのための研究開発にも積極的で、化学業界では最高の年間18億ユーロ以上の研究開発費を投じ、世界で約11,000人の従業員がR&Dに従事しています。およそ3,000件のR&Dプロジェクトが走っており、年間1,300件(2013)の特許申請を行っています。

これに加えて、特にオープンイノベーションによる新規事業創出にフォーカスした活動を行っているBASF New Business (BNB)とBASF Venture Capital (BVC)というグループが存在しています。ドイツにおいては、それぞれBASF New Business GmbHとBASF Venture Capital GmbHという本社からは独立した法人となっています。

 

BNBは、既存事業部では体質的に困難である中長期的に有望な新規事業を創出することをミッションとしており、大きく分けてスカウティングチームとインキュベーションチームで構成されています。スカウティングチームが発案・評価したプロジェクトを、インキュベーションチームが新規事業として育成し、それを事業部に移管するというのが大まかな流れです。BVCはBNBの100%子会社としてBNBと同時(2001年)に設立されました。そのミッションは「テクノロジーへの窓(Window on Technology)」を開け、画期的な製品・技術などをBASFに取り入れることと、そのようなテクノロジーを有するベンチャーへの投資によりファイナンシャルリターンを得ることです。申し上げるまでもないかもしれませんが、事業会社のCVCですので、その本業とのシナジーが無い投資は行いません。シナジー有無の判断をより正確に行うために、投資検討段階において「endorsement」を得るというプロセスが必須となっています。この場合のendorsementとは、当該製品・技術に興味を持つ事業部や研究グループからの投資案件に対する支持表明であると同時に、その後のステップに対するコミットメントを得るためのものです。このコミットメントとは金銭的なものではなく人的サポートであり、BVCメンバーとタッグを組んで、デューデリジェンス、更には投資後のポートフォリオ企業の支援まで行うということに対するものです。

 

BVCはグローバルで年間900件程度のディールを評価していますが、endorsementを得られるものは~5%、投資に至るものは~0.5%となっています。数字でこのように書いてしまうと、「BASFから出資をしてもらうのは難しい」と単に結論付けられてしまうかもしれませんが、インベスターとしてだけではなく、ベンチャーの成長のための戦略的パートナーとしても是非検討いただきたいと思います。上述のendorsementを得るためには、それなりの技術データやビジネスポテンシャルを要求されます。それらを評価するために、密な情報交換はもとより、製品サンプル評価、さらには共同開発に至るケースもあります。そのような段階をcooperation dealと称していますが、そのようなケースは年間60件程度あります。Cooperation dealとしてのお付き合いが始まり、endorsementを経て、投資に至るというのは、BVCの投資プロセス上の流れとしてはごく自然です。ベンチャー企業側から見れば、まどろっこしさを感じるかもしれませんが、大企業との付き合いにはある程度の時間がかかることを覚悟いただき、ご理解いただければと思います。先述の通り、BVC自体は本社から独立した法人となっていますので、フレキシビリティや決裁スピードは、より高いものとなっています。

 

日本においては、これまでのところ直接投資の実績は残念ながらありません。しかしながら、日本発のイノベーティブな製品・技術に対する期待は依然として大きいものがあります。この点は、BASFグループの日本法人であるBASFジャパン株式会社の期待とも共通します。国内生産拠点の海外移転(空洞化)が進行する中で、BASFジャパンが持続的に成長し、その価値を将来にわたって維持するためには、日本発のイノベーションを海外のBASFグループへ継続的に発信していく必要があります。余談ではありますが、BASFジャパンには「ジャパンイノベーションチーム」というチームが組織されていて、大学等の学術機関やベンチャーを含む民間企業とのアライアンス等を通じて、イノベーションの種を発掘・発信しています。化学分野でのイノベーションの種をお持ちで、BASFとともに成長していただけるベンチャーさんをお待ちしております。世界に目を向けたビジネスプランを描いてみませんか?

 

 

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