コラム

ベンチャーファイナンスを活用した事業の作り方


松本 恭摂

ラクスル株式会社
代表取締役社長

アントレプレナー

2014/06/25 14:00



スポットライトの社長であり、大学時代のサークルの先輩でもある柴田陽さんにバトンを頂きました、ラクスル株式会社の松本です。

私はA.T.カーニーという戦略系コンサルティング会社でコンサルタントとしてキャリアを始めた後、印刷のEコマース事業を展開するラクスルを設立しました。自社では印刷機を持たず、全国の印刷会社とネットワークを構築し、当社のウェブサイトで受注した印刷物を全国の印刷会社で印刷するという事業を行っております。

事業を始めてから気付けば5年という時が経ち、累計で20億円弱のベンチャーファイナンスを実施し、沢山の失敗と遠回りを繰り返しながら事業を作っております。今回は、その中で学んだ、起業家の立場からベンチャーファイナンス市場を活用した事業の作り方をステップに分けお話できればと思います。



1、顧客価値のあるサービスを作る

スタートアップにとって最も重要なことは大義名分です。サービスが世の中をどう良くするのか、この大義名分があって初めて人もお金も集まり、サービスができます。

そしてこのサービスはコンセプチュアルでイノベーティブであるだけでなく、ユーザーにとって価値がある必要があります。事業上はサービスの顧客価値を高めることが、リピート率向上につながり、LTV(Life Time Value)を大きくします。またサービスの顧客価値を高めることは、競争優位性にもなります。



2、拡張性のある顧客獲得の手法を見つける

顧客の獲得方法には、営業、紹介、バイラル、SEO、広告、PR、量販店など様々手法があります。事業の拡張の手段がどこになるのか、1顧客の獲得にかかるコストはいくらか、まずはこれをクリアにする必要があります。

その上で、ベンチャーキャピタル(VC)を活用した事業作りにおいて重要なことは、「お金をかけずに収益を上げる」ことではなく「(お金をかけてでもよいから)どこまで顧客獲得ができるか」のスケーラビリティ(拡張性)です。

天井の低い事業ですと、足下の収益は立てやすくとも、早い段階で事業が頭打ちしてしまいます。顧客獲得の拡張性が高ければ高い程、大きな事業になる可能性が高く、たとえお金が必要でも出し手は見つかりやすいはずです。



3、サービス生産/オペレーションの拡張性を担保する

調達したお金を投下して顧客獲得のスピードを上げた時に、サービスやプロダクトを現状と同コスト同クオリティーで生産・提供し続けられるかどうか、その体制作りもVCファイナンスを活用したスピーディーな事業立ち上げには重要となります。

少量であれば生産/オペレーションが回るけれども、売上が100倍の規模になったときに、または売上を100倍にするために、現状の延長線上では生産/オペレーションがボトルネックになり実現できない場合、その問題の解決策を見つける必要があります。その際の問題解決を行うために必要な投資規模も把握しましょう。



4、足下の収益性を知り、改善余地を見極める

広告、コンテンツ販売/課金、EC、SaaS、手数料と様々な収益の立て方がありますが、どのビジネスモデルをとるにしろ正確な収益の理解が必要になります。

どの収益構造であれ、サービスを1単位あたりユーザーに提供したときに発生する利益とその時に限界的に発生するコストを明確にし、その差分から限界利益が売上に対して何%なのかを把握しましょう。その上で、規模の追求/新規投資/契約により限界利益は拡張が可能か、最終的にはどこまで上がるかを見立てましょう。



5、必要資本をシミュレーションし、資本政策を決める

1でみたLTV、2でみた顧客獲得コスト、3でみた生産コストと資本的支出、4でみた限界収益が分かれば、事業を作るにあたって必要な投資金額と回収期間のシミュレーションができるようになってきます。

どの程度の投資を行い、どの期間で回収し、どの規模の収益を上げていくか。そのためにどの時期に何度ファイナンスを行い、どの程度の希薄化を許容するか、これを考えるのが資本政策となります。

 

以上が私が経験してきた中で学んだ、VCから信頼を得て出資を獲得し、継続的に事業をスケールするために必要なプロセスになります。

上記の中で、正解が最も出しづらく、多くの経営者が悩むのが調達額と希薄化の割合です。

個人的な意見にはなりますが、外部資本の活用を決める段階で創業者のオーナーシップへのこだわりはあまり強く持たず、事業をスケールさせるために必要な資本を獲得した方が全体のパイが大きくなるのでは、と思っております。

初回の外部調達で70%、2回目で50%、3回目で34%、4回目で24%と毎回30%程度の希薄化を許容し、十分な資本の獲得を行っていきスピード感と規模感を持った事業展開をしていけばメガベンチャーが生まれやすくなると思っております。

そしてまた、規模を出す事業を作り出すには優秀な投資家や外部役員の参加は事業に取ってプラスであり、ガバナンス強化にもつながりよりよい影響を与えるはずです。



日本でも個人保証を入れることなく、VCがリスクマネーを供給してくれ始めたおかげで、起業家の取る経済的なダウンサイドリスクは限りなくゼロに近づきました。また、足下は十分な資金供給がある状況です。

シリコンバレーのようにVCのサポートを受け、大きなレバレッジを効かせ、短期間で新しい産業を作り出す、そんなダイナミックなスタートアップを作る土台が日本にも少しずつ出来始めたように思います。

そんな大きなチャレンジをする仲間が増えるといいな、と思いつつ締めくくらせて頂きます。

 



●関連企業 ラクスル株式会社

 


松本 恭摂

ラクスル株式会社
代表取締役社長


尾市 守
株式会社エクシード
2014/6/26 09:41

自分にとってはめちゃくちゃタイムリーでいい内容の記事です!貴重な経験のシェアありがとうございました!またすごく表現が洗練されていてわかりやすかったです!

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