コラム

起業家適性をはかる3つのテスト


柴田 陽

株式会社スポットライト
代表取締役

アントレプレナー

2014/04/30 14:00



チケットスターの社長であり、マッキンゼー時代の先輩でもある松居健太さんにバトンを頂きました。

私は、学生時代から数えて4社を起業し、3社をバイアウトしています。その中で感じたことを、起業に興味をお持ちの方や、起業したての方に向けてお話したいと思います。

 

 

 喜ばしいことに、日本でも最近、スタートアップを志す人が増えてきているようです。特に、GREEやDeNAなどのメガベンチャーの元社員や、外資系企業など、労働市場の流動性が高い産業からスタートアップへの人材移動が起きています。

 多くは、自信のある優秀な人材が中心ですが、それでもなおスタートアップという未知の世界に飛び込むにあたり、はじめから起業し自分が経営者になるか、それとも一旦他のスタートアップで経験を積むかに迷う方も多いようです。私もよく「将来的に起業したいが、自分には起業家としての適性が備わっていると思いますか」というご相談を頂きます。

 他人にあれこれ言えるほどの研究したわけではありませんが、自分自身の4回のわたる起業の経験と、周囲の優秀な起業家との交流から得た私なりの考察をご紹介したいと思います。

 

 

「自分は起業に向いているでしょうか」という質問に対する答え

 米国流に言えば「『自分は起業に向いているでしょうか』という人はそもそも起業すべきでない。なぜなら起業とは生易しいものではないのだから、どうしても起業して世界を変えたくてたまらない人だけが実行すべきものだ」となると思われますが、ここはあえてきちんと適性について踏み込みたいと思います。

 そもそも、スタートアップには際限のないモチベーション(「起業したくてたまらない」などの情熱)が必要なのは言うまでもないが、それだけでは俄然、不十分です。モチベーションだけあって資質のない起業家は大勢居ますし、むしろ巻き込まれた人を不幸にするので、モチベーションを過剰に評価すべきではありません。「自分は起業家として適性があるか」という冷静な問いをたて自分を客観視できることは、自己を正当化する認知バイアスがかかりやすい起業家にとって、まちがいなく大切にすべき感覚の一つであす。

 

 

適性① プロダクトオーナーとしての適性

 スタートアップのファウンダーにとって、初期の最も重要な役割として、自社のプロダクトやサービスを「作って」「売る」ことがあります。従って、良いプロダクトを作って顧客(ユーザー)を捕まえることはファウンダーにとってクリティカルな能力です。

 これは必ずしも、プログラミングができたり、イラストレーターが使えたりしなければいけないということではありません。(もちろん、できれば加点要素です)

 例えば、B2Cのウェブサービスであれば、

・ユーザーのニーズを把握する

・ユーザー体験を設計する

・上記ユーザー体験を実現するシステムの大まかな設計をする

・ウェブマーケティングのキモを理解する

などでしょうし、B2Bであれば、ローンチカスタマー(最初の見込み客)を連れてくる営業力が当てはまるでしょう。

 特に、最近のテック系スタートアップのプロダクトオーナーは、細部へのこだわりも含めた製品作りのセンスを求められる傾向にあります。スティーブ・ジョブスの製品へのこだわりを示すエピソードには事欠きませんが、彼ほどではないにせよ、プロダクトに対して確固たる信念を持っていることは、コンシューマー向けのプロダクトにとっては有利に働く場合が多いようです。

 一方で、プロダクトオーナーとして、自分にしかできない能力があるかどうか、という所まで気にする必要はありません。どのようなプロダクトであっても模倣されることは不可避ですし、その時点で市場にない優位性があれば十分です。たまに、「その製品があなたにしかつくれない、ということを証明してください」などという質問をする投資家や大企業の担当者が居ますが、そのような素人の質問には聞こえないふりをして差し支えありません。

 

 

適性② 組織のリーダーとしての適性

 スタートアップは、2人目のファウンダーを加えた時点で組織になり、ファウンダーはリーダーとなります。従って、リーダーシップの能力は欠かす事のできない適性です。

 スタートアップでなくとも、部下のマネジメントやコーチング、モチベーションの引き出し方などは、企業でリーダーをやったことのある方であれば経験や自分なりのノウハウがあると思いますが、スタートアップ特有の適性として、採用力があげられるでしょう。

 大企業であれば主に人事部が採用を担当し、その後部署からのニーズ(予算)に応じて配属という形でアサインメントが決まるのに対し、スタートアップではどのような役割がいつ、何人必要であるかを決めた後、市場から自分で適任者を探してくる必要があります。

 組織が小さいうちは、つながりを辿って良い人材とつながるソーシング力、候補者の志向性やスキルと役割をマッチさせる目利き力、必ずしも待遇条件面で有利でない中、仲間に引き込む口説き力が必要ですし、100人、1,000人となってくると、相応のビジョンを掲げて浸透させる力が持続可能な採用力を決定付けます。

 私の周囲にも、圧倒的なリーダーシップを武器に事業を拡大させている起業家が何人か居ます。特に、営業ドリブンな事業など、急速に組織を拡大させることが事業の成長につながる場合、リーダーシップの強みは事業そのものの強みに直結する例が多いようです。

 

 

適性③ 資金を集めてくる適性

 スタートアップには資金調達がつきものです。事業が自己増殖的に回り始めるまで、ファウンダーは資金を集めて会社の預金口座をお金で満たし続けなくてはなりません。この適性は、単なるスキルと言うより、あなたのこれまでの起業家としての実績や、職歴や学歴、受賞歴などあなたを表象するシグナル、人柄や性格などの印象の総合値が影響します。また、人脈があることもこの適性にプラスの影響を与えます。例えば、お父さんが資産家で、彼や彼の友人が応援してくれることで企業価値が5倍になるようなことも、現実にはあり得ます。これはアンフェアではなく、起業家の適性の一つとして割り切らなくてはなりません。もちろん、コネも学歴もなくても、実績を積み重ねることでこの適性を強化することは可能です。

 こう言うと、自分にそのような適性があるかどうかわかりにくくなりますね。そこで、自分に資金調達の適性があるかどうかを判定する簡単な方法を教えます。それは、あなたの会社の設立に必要な当座の資金(仮に500万円としましょう)を集められるかどうか、というテストです。お金に色はありませんので方法は何でも構いません。親から借りても、元上司に出資してもらっても、ビジネスコンテストに出て賞金を稼いでもかまいません。大きな犠牲を払うことなく、集めることができればまずは合格です。あなたには十分な信頼や実績があるということです。逆に、マイホームを担保にビジネスローンで借りる以外に開業資金を集めることができないようでは、先が思いやられるので残念ながらスタートアップには不向きでしょう。(しかしながら、そのような状況から成功した方も居ることは否定しません。推奨しませんが自己責任でどうぞ・・・)

 

 

3つの適性をファウンダー間で分業できるか

 あなたがもし、これら3つの適性をすべて兼ね備えていれば、起業家適性は高いと言えます。一方、3つのうち2つは自信があるが、1つは難しい場合でも、共同ファウンダーないしもっとも初期のメンバーとして、残り1つの適性を有し全幅の信頼がおける人材を見つけることができれば、補完することができます。

 では、3つのうち1つしか自信がない場合はどうなるでしょうか。基本的には、まずは他のスタートアップに参加し、残り2つの適性を身につけることが賢明でしょう。とくに、資金を集めてくる適性(③)については、経験を積むにつれてレベルアップする可能性が最も高いものです。

 一方、幸運にも①~③のうち1つだけではあるが、ずば抜けた才能を持っている場合は、3つの適性をバランスよく備えている場合より高い確率でスタートアップを成功させられる可能性があります。プロダクトを作る天才や、カリスマ的なリーダーシップの持ち主、限りなくお金を引っ張ってこれる人など、世界にはすばらしい才能の持ち主がたくさん居ます。こうした起業家と、自分と仲間の力を武器に切磋琢磨できることも、スタートアップの醍醐味のひとつです。

 

 

起業家適性をはかる3つの簡易テスト

 さいごに、適性①~③をはかる簡単なテストを再掲します。

①プロダクトオーナーとしての適性:あなたは、仮に制作に必要なリソース(ヒトやお金)があったとして、在来のプロダクトと圧倒的に違うプロダクトを作れる自信がありますか?

②組織のリーダーとしての適性:あなたが起業の準備を始めたら、会社設立前からそれを手伝ってくれる必要人材(例:エンジニアやセールス)を2人以上確保できると思いますか?

③資金を集めてくる適性:あなたは、開業資金500万円を大きな犠牲を払うことなく集めてくることができますか?

 さて、いくつ当てはまりましたか?2つ以上の方、またはずば抜けたものがある方は、ぜひ今すぐ起業してみてください。1つも当てはまらない場合は、、、まずはスタートアップにメンバーとして参加してみましょう。

 

 

●関連リンク 株式会社スポットライト

 

 


柴田 陽

株式会社スポットライト
代表取締役

シリアルアントレプレナー
大学卒業後 マッキンゼー・アンド・カンパニー 入社
2010年3月 株式会社コードスタート 設立 代表取締役
2011年3月 同社を株式会社アイ・エム・ジェイに売却
2011年5月 株式会社スポットライト 設立 代表取締役
2013年10月 同社を楽天株式会社へ売却
2016年11月 株式会社クラウドポートを創業


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