コラム

ベンチャーの情報発信は大切な経営活動


北村 彰

株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
代表取締役

アントレプレナー

2014/01/08 15:54



あけましておめでとうございます。ジャパンベンチャーリサーチ(JVR) 代表取締役 北村 彰です。

2014年初回のコラムではこの場をお借りしてentrepediaのご紹介をさせていただきます。

2013年はentrepediaの本格サービスを開始し、米国のCrunchBaseやAngelListを目標にアジア版のグローバルベンチャーコミュニティにチャレンジしてきました。Beat6の現在、システム機能としてはCrunchBase、AngelListのレベルにほぼ到達することができました。今年2014年前半には、ビジネス系SNSとしてニーズマッチングや会議室、メッセージング、そして多くの方々に期待されている英語版をリリースする予定です。



【アジア版 CrunchBase、AngelListを目指して】

「entrepediaとは何か?」多くの方から良く聞かれる質問です。分かりやすく米国のCrunchBaseとAngelListを例にあげて説明しましょう。

CrunchBaseは、IT分野のニュースメディアとして知られているTechCrunchと連動するベンチャー企業データベースで、資金調達やキーマンのプロファイル、株主情報などを見ることができます。ニュースとデータベースの連携は以前から多くの方々によってその必要性が問われていました。アーカイブサービスなどニュースの検索サービスはありますが、その記事に関係する企業の情報は他のサービスにアクセスしてリサーチする必要がありました。

TechCrunchはこのニーズに応えるサービスであり、その内容は未公開ベンチャー企業の特徴を把握するために必要な情報が提供されています。そして最大の特徴は、ベンチャー企業や投資家自らが情報をアップデイトすることにあります。非常に多くの情報が日々更新され、CrunchBaseはこれらの投稿された情報から各種分析レポートを発行し、そしてこのレポートは米国におけるベンチャー投資の傾向と対策を図るために利用されています。

AngelListの誕生は、個人投資家(エンジェル)が自己の投資案件をPRするところから始まりました。エンジェルは生まれて間もないベンチャー企業を応援する強い意識から投資を行います。非常にリスクの高い時期の出資ですから、なんとか早くベンチャーキャピタル(VC)から評価され、大きな資金を得られるようなレベルになってほしいと願います。そのためエンジェルは、自身の投資先がいかに素晴らしい企業であるかコメントを書き、PRします。多くのエンジェルは高いスキルとキャリアを持っているため、各々の専門分野や資する知見からレベルの高いコメントを積極的に発しています。

米国においては、シードアクセラレーター、シード・アーリー系のVCは、AngelListをリファレンスに利用しているため、もしAngelListに登録のない企業からコンタクトがあった場合には「まずはAngelLstに登録してほしい。」と言われるくらい、昨年ごろからAngelListが社会的なベンチャー認知システムとなっているように感じます。このような状況から起業家は起業と同時にAngelListに登録し、その上でエンジェルにコンタクトをして出資の依頼をします。AngelListに登録する起業家にとってのメリットはエンジェルへ直接コンタクトできることです。

一方、エンジェル側のメリットは『お断りボタン』を押すだけで容易にお断りができること、と伝え聞いています。お断りプロセスの手間が省けることは、決して起業家をないがしろにしているということではありません。逆に起業家がエンジェルに対して気軽にリクエストできる機会が増えるということでもあります。最近はシンジケートを組成し投資家を束ねるなど、ベンチャー企業の資金調達マッチングをより強力にサポートしています。

このように米国ではCrunchBase、AngelListがベンチャーコミュニティのプラットフォームとして社会的役割を担っているといえるでしょう。CrunchBaseもAngelListも基本はベンチャー企業、投資家の情報発信にあります。それらの情報発信が双方のメリットとなっており、米国では情報発信することがベンチャー企業の成長のために極めて重要な要素として認識されています。



【成長のためには積極的な情報発信を継続的に行う】

私自身は、1990年以降Oracle、Gupta、Siebel、salesforce.comなど数社のジャパンエントリーと、創業、立上げを経験してきました。ジャパンエントリーを検討するにあたり、当時これらの企業は日本では無名であったため、米国の創業者のプロフィールや株主である投資家の顔ぶれ、ボードメンバー、資金状況など、まずは基本情報をチェックしました。そして次に確認する重要なことは、その企業から発信される情報の量と内容です。それら発信情報は企業の活力を表しています。充実していればそのエネルギーパワーが感じられベクトル(方向)を確認することができます。情報発信の内容を時系列に並べるとそこから成長のスピード、努力の経緯を見ることができます。

米国のベンチャー企業は、事業がBetaの時期になるといわゆるPR会社と契約をして企業のブランド作りに努めます。シリコンバレーのベンチャー企業を訪問すると、玄関ロビーに20cm以上もある分厚いファイルをよく見かけます。このファイルには多くのメデイアに掲載されたニュースや記事のコピーが閉じられています。ファイルの厚さを見てその企業の活力、元気さ、マーケテイング努力を計ります。(これらは委託をしたPR会社の成果物ではありますが。)

entrepediaはこうした事業PRの目的を実現できる情報発信のプラットフォームです。企業から発信したプレスリリースやお知らせは、その企業の基本情報や株主情報などとともに関連付けられ、保存されます。その情報量が多いほど活力のある元気な企業の証拠です。情報発信は、ベンチャー企業はもちろん、投資家、支援者も行うことが可能です。ベンチャー企業側からだけでなく、投資家や支援者側も情報発信することで、お互いの見える化を実現し、そこから新たなビジネスチャンスや会話が生まれることを期待しています。

ここからは、entrepediaの元になっているJVR資本政策データベースとentrepediaの機能についてご紹介します。



【データはベンチャー支援や研究、施策など公共目的でのみ利用】

entrepediaの登録情報は、JVR資本政策データベース(JVR/DB)が元になっており、その情報の一部が一般に公開されています。そしてユーザの方々が更新したentrepediaの情報はJVR/DBへ反映されます。JVR/DBは、ベンチャーの基本情報をはじめ事業成長、増資ラウンド、ラウンド明細、投資家、ファンド、人物、人物履歴、支援者、競合の情報から成り立ち、関係付けされています。これらのデータは、各社ウェブサイトや各種ニュース、一般に公開された情報から、JVR調査員が1件1件収集してデータベース情報に加工し時系列に登録したものです。

JVR/DBは一般公開されることはなく、投資家やシンクタンク、調査研究機関、政府官庁、大学研究者のみが契約により閲覧することができます。ここでいう投資家とはVC、CVC、一般企業のM&A、投資担当の方々です。国内だけでなく海外からの閲覧もあります。ときどきこれらデータをベンチャー企業向けの営業目的で購入したいと依頼がありますが全てお断りをしています。JVR/DBは投資家、あるいは、ベンチャー研究を行う機関にのみに限定して提供を行っています。

これまでは未公開企業の成長と資本政策に関する情報が希薄だったため、日本のベンチャー研究は困難な状況にありました。現在はJVR/DBの整備により、これらデータによる様々な活用、研究のテーマを生み出しており、最近ではベンチャー企業の研究者が増加し海外で発表される論文も多くなるなど国外からの評価も高まっています。また、政府官庁をはじめその委託先であるシンクタンクや研究機関などの利用も始まっており、データによる施策検討、評価が可能になっています。さらには、都市づくり、街づくりの研究としてベンチャーの生態系がテーマとなりJVR/DBが利用される例も出てきました。

皆さんから発信、提供される情報は大変貴重です。わたしたちはベンチャー支援の目的とベンチャー研究、施策など公共の目的で、こうした貴重な情報をデータベース化し、そしてその精度、信頼を高く維持することをJVRの使命としています。この社会的意義をご理解いただき、今後もご協力をお願いできれば幸いです。



【英語化とVentureSourceとの連携】

2014年からJVR/DBの内容は英語化され世界の投資家が利用するDow Jones社のVentureSourceにインポートされます。(2013年末時点に登録されている情報から) 注:VentureSourceもJVR/DBと同様にベンチャー支援、投資家のみが閲覧を許されています。

これにより世界の投資家が日本のベンチャー企業、ベンチャー投資を評価することが可能となります。これまで世界の投資家は、日本のベンチャー企業を知る機会がなく、その存在すら気づくことはありませんでした。世界の投資家がVentureSourceを通してシリコンバレーのベンチャー企業を参照するとき、同時に類似モデルの日本のベンチャー企業もリファレンス参照されることが可能になります。日本のベンチャー企業は今後世界の投資家から投資を受ける、あるいは、買収されるチャンスなどの可能性が広がります。

海外の投資家に情報をリファレンスされた場合の効果を視野に入れ、皆さんにぜひ考えていただきたいと思います。せっかくユニークなウェブサービスにチャレンジしているにもかかわらず、事業概要が「ウェブ開発、ウェブコンサルティングサービス」としている企業を見かけますが、これでは海外の投資家、CVCの目に留まる機会を自ら放棄しているようなもので大変もったいないです。前述のとおり、経営メンバーのキャリア、投資家、株主情報、資金調達情報なども見られることになります。わたしが海外のベンダーを評価した時のように同じ視点で海外の投資家、チャネル、CVCがこれらの情報を見て評価することになるでしょう。

ベンチャー企業の皆さんは、entrepediaに登録されている貴社情報、関連情報を確認していただき、ぜひ海外の目線で評価してみてください。IPOを視野に入れている成長実績を既に持つベンチャー企業こそ、entrepedia情報を国内外の投資家、VC、CVCから評価され得る内容にする必要があります。

 

※entrepediaの登録情報は、JVR資本政策データベース(JVR/DB)が元になっており、その情報の一部が一般に公開されています。ユーザの方々が更新したentrepediaの情報はJVR/DBに反映されます。JVR/DBの情報は英語に自動翻訳されVentureSourceへインポートされるとともに、entrepediaの英語版でも公開されます。



最期にentrepediaの計画と目標を述べさせていただきます。



【entrepedia 今後のリリース計画】

2014年2~3月の計画として次の機能の開発を進めています。

・ニーズの発信
・メッセージ送信
・会議室の利用
・英語版
・ユーザのプロフィール公開

ベンチャー企業、投資家、事業会社(大企業・中堅企業)、支援者の方々のコミュニケーションネットワーキングをサポートします。事業成長の様々な場面でご利用いただけることを願っています。



【entrepediaの目標】

5,000社を超える活発な成長ベンチャー企業と10,000社を超える既存企業および海外企業が協業することはベンチャー企業にとって大変有益な成長機会です。そして、日本の産業界にとってもイノベーションの機会増大が期待できます。また、投資だけでなくM&Aも活発化し、これらExitの増大はVC投資をより積極化します。こうしたベンチャーを取り巻くエコシステムの形成をentrepediaで実現し、そしてそれが業界の活性、発展につながるとしたらこんなに素晴らしいことはありません。

これら協業、投資、M&Aなどを実現する情報プラットフォームとして、2014年entrepediaはより進化し皆様のご期待に添えるよう努力して参ります。これからも引き続き、皆様のご理解、ご支援をお願いいたします。

 

●関連リンク
株式会社ジャパンベンチャーリサーチ

 


北村 彰

株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
代表取締役

日立でSEとしてメインフレームの開発に携わり、その後日本IBMに13年間在籍し、プロダクトマネジメント、営業、副社長補佐など数多くの経験をする。1991年より日本オラクルの立ち上げに参画、製品開発、OEM事業などを担当し日本全国、海外で活躍する。
1994年 日本グプタを設立(イーシステム/ヘラクレス上場。現社名:キヤノンエスキースシステム)、そして2000年 セールスフォースドットコムを設立、それぞれ社長を務め、CRM市場の拡大発展、クラウドサービスの幕開けに貢献する。

これまでのベンチャー企業立上げや事業再生、IPO経験を活かし、現在は、サンブリッジグローバルベンチャーズにおいて、数多くのベンチャー企業へ投資や経営のサポートを行う傍ら、特定非営利活動法人Japan Venture Researchの代表理事、そして、株式会社ジャパンベンチャーリサーチでは、ベンチャー企業が成長するために必要なエコシステムを実現するために「entrepedia」(アントレペディア)のサービスを開始し、ベンチャー企業とベンチャーを支援するベンチャーキャピタルや大手事業会社とのネットワーク作りを目指して事業を行っている。


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