コラム

アントレプレナーのエコシステムの絆を作る!


長南 伸明

新日本有限責任監査法人
パートナー 公認会計士

サポーター

2013/12/25 13:54



18年程度ベンチャー企業の支援をさせていただいている新日本有限責任監査法人の長南伸明(ちょうなんのぶあき)です。

新たな資金調達方法であるクラウドファンディングを推進されている、赤井厚雄さんからバトンを頂きました。赤井厚雄さんがアカデミックに書かれておりまして大変恐縮ですが、起業家(アントレプレナー)の周辺で現在起こっていることを中心に個人的な雑感を記載させていただこうと思います。それは違うよと思うこともあると思いますが、個人的見解ということでご容赦いただければ幸いです。

 

【大企業の大転換とベンチャーブーム】

1990年後半以降については、重厚長大産業や金融機関を中心に、「失われた10年とか20年」とか言われるように、一環して坂を転がり落ち、みんなが下を向いている印象があります。日経平均株価の動きや戦後の日本経済を引っ張ってきてくれた大企業の倒産・リストラなどの状況を鑑みるに、大きな転換点を迎えています。大企業においては、今でも過去最高益更新というような文字も目にしますが、その裏には、余裕とも思える人件費や外注先経費のカットなどによることも大きいのではないかと考えます。20年前はゆったりしていたという良い側面があり、今はあまりにもスピードが早すぎて世知辛い時代になったと感じることもあります。一方で、年功序列社会が壊れつつあり、本当に頭や時間を使って働いている若者を中心に、頑張った者が報いられる状況が以前と比べると格段に増えたと思います。今でも、経済は大企業を中心に回っていますが、グローバル化とビジネスサイクルのスピードなどにおいて、群雄割拠の時代に入り、流行り廃りはより激しくなったと思います。

世界の各業界(自動車、電気、EC・小売、ITソフト、通信キャリア、ITハード)における業界および各企業の時価総額から、どのような勢力図になっているかを記載します。

 

昭和の時代にもベンチャーの歴史というものは、トヨタ自動車やホンダなど数多くあったと思います。平成の時代では、1990年台後半の西川潔氏のビットバレー構想をきっかけとした第1次ベンチャーブームがありました。その後は、2001年のITバブル崩壊、2006年のライブドアショック、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災と冷え込んでいました。2012年末からのアベノミクスから始まる第2次とも第3次とも言えるベンチャーへの期待が高まっている状況が続いています。

ライブドアショックやIT企業の粉飾決算などが続いたことにより、若手アントレプレナーのマインドは冷え込みました。チャレンジするのは危ないとか、悪いことだ、みたいな変な風潮がありましたが、ある程度は払拭されたのではないかと思います。

現在のベンチャー経営者は、以下の3世代に区分できるかと考えております。第1世代としてソフトバンクの孫正義氏、楽天の三木谷浩史氏など、第2世代としてサイバーエージェントの藤田晋氏、GREEの田中良和氏など、現在の第3世代としてリブセンスの村上太一氏などが該当するかと思います。各世代においては、ビジネス領域や経営手法は異なるものの、ベンチャースピリットやイノベーションを起こすという点では、共通項はあろうかと思います。

数多くのアントレプレナーの方々と接しさせていただき、勉強させていただきました。同時にその周辺環境の変化や浮き沈みとそれに伴う利害関係者の態度の変化を目の当たりにしました。会社の調子が良い時は多くのヒトやカネが寄ってきますが、悪くなった途端に潮を引くようにいなくなるという品格なき手のひら返しの分かりやすい構図です。

しかし、日米のアントレプレナーを取り巻く環境、ビジネスの展開、アントレプレナーの質量、資金の動向などについては好転しています。金融機関の大再編から始まり、大企業の合従連衡、高学歴な方々がアントレプレナーの道を選ぶケースの増加、ベンチャーキャピタリストの方々の目利き、産学連携の動きなどです。個人的には、自分も含め、会計士はまだこの動きに追い付ききれていないなという危機感を感じています。単なるベンチャー支援やIPOコンサルだけでなく、裏方として、アントレプレナーを中心とするヒトの循環を生み出すエコシステムの一部を担えるように意識を変化させることに注力しています。

しかし、監査法人や会計士としてできること、やらなければならないこと、期待されることにも変化があり、十分に対応しきれていないと感じる場面も多いです。このまま対応しきれない場合にはコモディティ化せざるを得ないという現実にさらされていると感じております。最近、こうした過渡期の状況からの焦りなのか、安易なダンピングの横行やベンチャーに売上をつけて顧客獲得するなど本質とはかけ離れていること、本質である企業成長のためのアドバイザリーのクオリティまでもが低下していることを散見します。結果として健全なエコシステムができないのではないかとの一抹の不安はあります。会計士は、企業のパートナーであると同時に、審判的な役割も担っており、バランス感覚は一定の経験がないと難しいのかなと感じております。

監査法人を選定される際には、現場を担当する監査チームメンバーのIPOやビジネスに対する専門知識があることが最重要であることはいうまでもありません。しかし、会社の経営指標を左右する種々のプリミティブなジャッジメントを行うパートナーを抑えておくことは必須です。ビジネス環境が激変している昨今においては、パートナーが、ビジネスの動向と本質を見抜いているか、単に表面上のロジカルシンキングに走っていないか、社内調整能力があるか、ヒトとしての品格があるかなどが、ポイントと思います。


長南 伸明

新日本有限責任監査法人
パートナー 公認会計士


北村 彰
株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
2014/1/8 12:57

今週のリレーコラムは新日本監査法人の長南さんの登場です。ベンチャーの世界で約20年活動をされています。過去から現在まで、米国と日本 と潮流の変化と流れを整理されており かなりの長文・力作です。これからの取り組み方などを考えるにも大変に参考になります。
長南さん ありがとうございます

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