コラム

保証人より怖い、監査役の責任?


富田 太郎

富田太郎司法書士事務所
司法書士

サポーター

2013/12/12 09:48



(1)はじめに

皆様、こんにちは!司法書士の富田と申します。

最初に、ほんの少し自己紹介を・・・。

私は新卒で某銀行系のノンバンク(その後の平成10年、負債総額2兆1800億円で倒産)に就職し、審査部等を経た後、一念発起、会社を退職し、平成10年司法書士の道に進みました。

司法書士資格の登録式の日が、元勤務していた会社の倒産日・・・という数奇な司法書士人生のスタートから始まり、今は、東京都新宿区で開業しております。

一般に司法書士は、不動産登記の専門家と思われていますが、私は数少ない会社分割・合併、種類株式、ストックオプションなどを専門とする会社法関係の司法書士です。そのような関係からか、司法書士業務の傍ら、VCや企業の監査役など経験させていただきました。

今回は、その経験から、皆様に若干??役に立つかもしれない経験談を述べさせていただきます。

 

(2)監査役とは名誉職?

皆様の中でも、友人、知人、業界仲間から「形だけでよいから、うちの監査役に就任してほしい」との依頼が来るかと思います。

登記簿をみると、多くの会社の監査役は代表者と同姓の方(配偶者等)が多いのですが、ある程度、会社が大きくなると、「コンプライアンス上の問題」から、あるいは「みてくれ」からも相応しくなく、外部の方に監査役を依頼することになります。

そのような場合、同業者の社長、友人に監査役に就任してほしいと依頼することが多いようです。

【同業者社長からの依頼】――――――――――――――――――――――――

「取締役ではなく、監査役だから、たまに会議にきてくれればいいよ。あとは決算期に監査報告書に判を押してくれるだけでいいよ。

それに会社の債務の連帯保証人になるわけではないのでリスクはないから!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

確かに、上場会社の場合など、監査役は名誉職に近い場合もあり、あまりリスクのない役職だともいます。しかし、一般企業の場合、本当に監査役ってリスクはないのでしょうか?

 

(3)監査役には2種類ある

実は、監査役の権限・職務には次の二つがあります。

【普通の監査役の職務】―――――――――――――――――――――――――

①業務監査権・・・取締役の業務が法令・定款に違反していないか監査する。要は取締役に法令違反、不正行為がないかチェックする。

②会計監査権・・・会社の会計・計算書類を監査する。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

上記のうち「①業務監査権」が重要な職務です。つまり「取締役の不正行為を監査する」という職務です。もし、これを監査役が見逃したら、株主から損害賠償請求される場合もあります。

「たまにしか、その会社に行かないのに・・・。形式だけの監査役だと思っていたのに・・・。」もはや遅いですね。

【会計監査限定監査役】

上記二つが監査役の仕事なのですが、もう一つの監査役の形態、「会計監査限定の監査役」(職務は「②会計監査権」しかない)というのがあります。

要はその会社の税理士等が作成する計算書類を適正かをチェックするだけなので、あまりリスクは高くないと思われます。

また、取締役の不正行為をチェックする権限(責任)はなく、取締役会への出席権もありません。

その会社の監査役が「会計監査限定」であるのか否かは、登記簿には記載されず(法改正の動きはありますが)、その会社の定款に記載されています。

監査役の依頼を受けたら、まず、その会社の定款を取得し「監査役が会計監査限定」の記載があるか否かを調べてください。

 

(4)社外監査役

次に、監査役には「社外監査役」というのもあります。

もし、友人、知人の会社から監査役の就任の依頼があった場合は、社外監査役の方がリスクは少ないと思われます。

【社外監査役の要件】(但し、要件については法改正される予定)―――――――

過去その会社やその子会社の従業員や業務を執行する役員でなかった者

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

社外監査役の場合で、定款に以下のようなことを定めてあり(かつ登記事項)、責任限定契約を締結していれば、なにかあっても責任が限定されることになります。

定款――――――――――――――――――――――――――――――――――

【社外監査役の会社に対する責任の制限に関する規定】

当会社は、社外監査役との間で、会社法第423条第1項の賠償責任について、法令に定める要件に該当する場合には、賠償責任を限定する契約を締結するこができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任の限度額は、法令の定める最低責任限度額とする

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〇なにか・・、読むのが面倒な規定ですね・・・。要は、定款に上記のような定めがあり、会社と責任限定に関する契約を締結していれば、



監査役が「取締役の不正行為」に対して知らず、また知らないことに重大な過失がない場合は、

(上記定款の例では)、



その監査役の責任は(おおざっぱに言えば)「監査役報酬としてもらった2年分の報酬」まで制限されます(監査役報酬が0円の場合は0円ですね)。

 

(5)まとめ 監査役の依頼を受けたら

もし、監査役の就任の依頼を受けたら、

①その会社の定款を取得し、会計監査限定なのか業務監査権もあるのかをチェック!

会計監査限定であれば、リスクが少ない。

②業務監査権もある場合は、リスクが高いので、社外監査役として選任してもらい、



かつ、定款に「社外監査役の責任限定」の規定をいれてもらい、会社と責任限定

の契約を交わす。

これで、リスクはある程度回避することはできます。

 

(6)苦い経験

ここまで偉そうに書いている私ですが、実は過去、監査役に就任したことにより、地獄の苦しみを味わったことがあります。

当時、私は司法書士業のかたわらあるVCの監査役に就任していました。そのVCがA社に出資をしたため、私に「A社の監査役就任」の依頼がありました。

条件は ①月1回のA社取締役会に出席するだけでよい

②報酬は月〇万円

③監査役は富田1名

うん!楽そうな仕事だな♪これだけで、月〇万円かぁ♪

さっそく私は、(4)で述べたとおり、「社外取締役の責任限定」の規定を定款に入れ、契約も締結。社外監査役に就任いたしました。

が・・・2回目の取締役会に出席したあたりから・・「おかしい・・この会社!毎月、返戻金とかいう不透明な返金が多すぎる。」

他の社外取締役と一緒に、帳簿、内部稟議書等を徹底的に調査したところ、A社代表者は、数社のVCからお金を引っ張るため「循環取引・架空取引」を行っており、実際の売り上げの10倍ぐらいの数字で決算書を作成し、あたかも売上好調、将来性のある会社のように見せかけ、VCからお金を調達したことがわかりました。

前任の監査役の責任だと思いながら??

株主からの非難・損害賠償責任から逃れるために、慌てて監査役を辞任したものの(注)、会社は、後任の監査役を選んでくれないため、あいかわらず監査役のまま。

(注)監査役を辞任しても、(定款で定めた員数に足りない場合は)後任の監査役が就

任するまで、なお監査役の職務を行う義務がある。「権利義務承継監査役」と言います。そう!辞任しても逃げることができません・・・・。

その後、A社代表者に自白書を書かせ、持株全部を放棄させ解任決議。

そして訴訟の準備・・。

株主には、「ちゃんと監査役の仕事をやっていますよ~!」と逐一状況報告!

膨大な時間をこの処理にとられ、本業の司法書士業務もままならず・・・・。

監査役などなるのではなかったと後悔したものです。

皆様、「たかが監査役、されど監査役」その就任には気を付けてくださいね。

 

●関連リンク
富田太郎司法書士事務所


富田 太郎

富田太郎司法書士事務所
司法書士

昭和34年 静岡県生まれ
中央大学経済学部国際経済学科卒業 大手総合リース会社出身
平成10年 司法書士登録
平成14年 ESG法務研究会に参加
主に出版・受験指導部門を担当
その他、東京司法書士会総合研修所「判例・先例研究室」室長を経験
現在、東京都新宿区を拠点に、金融機関、上場会社、ベンチャー企業を中心に司法書士として活動中。

「募集株式と種類株式の実務」(中央経済社/金子登志雄との共著)ほか多数の会社法実務書を執筆。そのほか、「楽学司法書士 不動産登記法5訂版」「楽学司法書士 商業登記法改訂版」「マンガはじめて司法書士会社法5訂版」(以上,住宅新報社)等の受験書も執筆。


Comment_u