コラム

スタートアップを目指す皆さんへ


孫 泰蔵

MOVIDA JAPAN 株式会社
代表取締役社長 兼 CEO

サポーター

2013/11/19 18:50



株式会社ロケーションバリュー砂川さんからご紹介を頂きました、MOVIDA JAPAN株式会社孫泰蔵です。大学在学中に日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」のコンテンツ開発のリーダーとして、プロジェクトを総括。その後、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社をはじめとした数々のインターネットベンチャーを立ち上げてきました。2009年にMOVIDA JAPANを設立して、これまでの成功体験と、失敗体験を活かして、ベンチャー企業の創業、育成に取り組んでいますので、そのことについて、お話いたします。



起業家の判断基準は、プロトタイプのデモと資質

その中でも中心となっている活動の一つが、2011年から始めた「Seed Acceleration Program」です。起業育成を目的としたプログラムで、事業化を目指すアイディアを公募して、すぐれていると判断したら、即座に500万出資します。これまで出資したのは、およそ30社。目標は10年間で1,000社です。

出資に関する選考はシンプルで、プロトタイプのデモと人物評価だけです。手の込んだプレゼン資料や事業計画書は要りません。事業のアイディアが優れているかどうかは、デモを見れば直感的にわかります。面白いものは面白いし、つまらないものはつまらない。小難しい理屈をいくつ並べても、よくわからないものではダメなんです。

また、事業を成功させられる起業家には2つの資質が必要だと感じています。一つは「情熱」です。石にかじりついてでもやってみせるという思い入れです。どんな事業でも最初に思い描いた通りにスムースにいくなんて、まずない。必ず壁にぶつかります。心が折れそうになるのだけれども、そこをあきらめずにやり遂げて見せるという強さです。

もう一つは「柔軟性」です。壁にぶつかったときに、たいていは肝心の軸がぶれないよう、方向転換や、やり方を変えたりします。そこで鍵を握るのが、柔軟性です。発想の柔軟さというよりは、いろんな人のアドバイスを受け入れて、取り込んでいける度量のようなものです。プログラムの中で僕は、いつもそこを問うようにしています。



チーム作り

日本でスタートアップしている僕らのところにも最近では、多くの若者に投資してほしいとやってきます。その中で一人で事業を進めようとしている人たちがいたら、たとえ彼や彼女がどんなに面白い画期的なアイディアと実現力を持っていたとしても、まずは喜びも悲しみも全部共有できる仲間をつくっておいでと、いったん帰すことにしています。スタートアップをするときには、心が折れそうになることが本当によくある。そんな時にチームであれば仲間が支え合って、助けることができる。

少し前までは、起業といえば、カリスマ経営者がワンマンで経営するスタイルが多く、経営者は孤独だといいながら、悩みを一人で抱えているといったイメージです。しかし最近のスタートアップはワンマン経営者ではダメで、創業者がいかに良いチームを作っているかが重要という考えが広がっています。シリコンバレーでも、ベンチャーキャピタルは、カリスマ経営者が一人でやっている企業には投資しません。



リスクをマネージする

一生懸命努力しても失敗に終わることもあります。日本では一度、起業に失敗したら、失敗者の烙印を押され、それが何かまた始めようと思ったときに、マイナスとなるときが往々にしてあります。しかし、1回や2回の失敗など気にする必要はないと思います。

むしろシリコンバレーでは、「失敗は経験」として評される傾向があります。ある程度の失敗を経験しておかないと、どこからが危険なのかの瀬戸際を見極める力が付きません。だからむしろ、1回も失敗していない人は、あまり評価が高くなく、大きな投資がされにくい。

そういう私も、失敗経験ランキングがあれば、少なくとも同世代では、世界でもトップに入ると思います(笑)。その金額や累計にするとスゴイ金額になるでしょう。しかし、同じ間違いは繰り返しません。こうして私が経営を続けられているのですから、皆さんも失敗なんておそるに足りないものだと思います。

しかし無謀とは話が別です。リスクはある程度、マネージする必要があります。これが失敗したら死ぬしかない、というような一か八かのレベルのリスクはとるべきでない。致命傷にならない程度にとどめておくということが大事です。



起業とは「一隅を照らすこと」

最後に、起業を目指すみなさん、既に事業をなんとか成功させたいと努力している皆さんに、是非伝えたいことがあります。

一隅とは、平安の昔に、当時総合大学のような役割を担っていた延暦寺を比叡山につくった最澄の言葉です。弟子たちの為に書いた「山家学生式」の冒頭で、「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」と。光が届いていない小さな片隅を明るく照らすものこそが、もっと尊い存在だと語っています。雨が降るとぬかるんでしまう道で、おばあちゃんが転んだら危ないからと、日曜大工で「すのこ」みたいなものを作ってあげるのも、「一隅を照らす」行為です。

起業とは大勢の人が求めているものを探したり、社会全体を変えられるようなことを考えださなければいけないと思っているかもしれません。僕は、自分自身が身近なところで「こういうものがあったほうがいい」と思えるもので、勝負すればいいと思っています。

それぞれが、見える「一隅」があり、100人の人が100の「一隅」を照らせば、社会はずっとよくなります。僕は、今後沢山の起業家が生まれ、それぞれの一隅を照らし、日本全体が明るくなることを信じています。

 

●関連リンク
MOVIDA JAPAN株式会社


孫 泰蔵

MOVIDA JAPAN 株式会社
代表取締役社長 兼 CEO


株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
北村 彰
2013/11/22 14:50

1995,6年にOracle創業メンバーである Umang Gupta氏、Bruce Scott氏とGuptaを立ち上げている頃、多くのトラブル・環境変化に直面し経営の危機に陥ったとき Guptaが言いました。 「失敗はこれからも沢山するだろう、大事なことは同じ失敗を繰り返さないことだ」と。 GiveUp危機の最中に この言葉を聞き 気を取り直した経験があります。
孫さん 貴重なお言葉 コラムの寄稿をいただき感謝です。

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