コラム

イノベーションを起こす起業に挑戦!


砂川 大

株式会社ロケーションバリュー
代表取締役社長

アントレプレナー

2013/09/18 14:08



【はじめに】

salesfore.comの倉林さんからご紹介を頂きました、株式会社ロケーションバリューの砂川です。新卒で三菱商事に就職し海外向けの鉄道案件を手掛け、その後Globespan CapitalPartnersというアメリカのベンチャーキャピタルを経て、2005年に日本で起業、昨年ドコモに会社を売却しました。投資家側のお話は、もっと詳しい方が大勢いらっしゃるのでそちらに譲るとして、いち起業家としてこれまでの道のりを振り返りつつ「もう一回起業するとすれば」を改めて考えてみたいと思います。



【企業人と起業家】

実は、私は、最初から起業しようと思っていた人間ではありません。それどころか、かなり情報感度がわるいのか、自分で会社を興すという生き方があることすら、学生時代はほとんど頭にありませんでした。大学を卒業して大企業に就職し、結婚して自分の父親のように幸せなサラリーマン人生を送る。当時は迷いなくそれを目指していました。幸いなことに希望していた三菱商事に就職することができ、インフラ輸出案件を担当して海外を飛び回る毎日。自分でいうのもなんですが順風満帆、まさに思い描いたとおりのスタートでした。

ところが社費留学した大学院で、最初に知り合った先輩に「今一番クールなベンチャーキャピタル(?)でのインターン(?)をするために、僕はこれからパロアルト(?)に行くんだ!」と教えてもらい、初めてスタートアップの世界を知りました。アントレナーシップの授業を受けてもチンプンカンプン、ただ「事業ってのは、自分で考えて始めることもできるんだ」と、それでようやくスタートラインに立ったのを覚えています。

思い込みというのは怖いもので、自分で自分の可能性に枠を設けてしまいます。これはこれで間違いない、という思考停止状態では、とてももったいない人生を送る事になるかもしれません。私も、あのままサラリーマンにどっぷり漬かっていたら、こんな波乱万丈で刺激的な日々を送っていなかったでしょうし、社会に自分の価値を直接訴えることもできなかったかもしれません。なので、素晴らしいビジネスアイデアを思いついたら、自ら事業を起こすという選択肢も、必ず考慮にいれるべきだと思います。

一方で、企業人と起業家を両方を経験した経験から「起業が正義だ、この際みんな起業しよう!」などと煽るつもりはありません。日本はまだまだスタートアップが少ないので、応援する人は、勢いそういうトーンになりがちなのもわかります。しかし、全ての人が起業家に向いているとは思いませんし、起業には特殊なリスクもつきものなので、そういった振り切ったメッセージを見るとやや違和感を覚えます。

大企業には大企業にしかできない事業があります。私がやっていたインフラ輸出などはそのいい例です。莫大な金を動かして、社会インフラを整備していくということをスタートアップがやるのはかなり難しいでしょう(グーグルはやっていますけれど…)。一方で、スタートアップにはスタートアップにしかできないことがあります。破壊的技術の多くはスタートアップがもたらしたものです。大企業でイノベーションを起こすことは、その組織構造上も難しいと言わざるを得ません。

したがって、自分が仕事を通して社会に何を還元したいのかをはっきり見極めたうえで、その目的を実現する方法の一つとして起業を捉えると、より適切な判断ができるのではないでしょうか。先に起業ありきという異能の人も中にはいますが、大多数の人はあまり流されず、まずは確固たる自分を持つことが大事です。

唯一の例外は学生です。学生のうちに一度起業してみることは、素晴らしい経験になると思います。ビジネスはいくら勉強しても、やってみないとわからないことはたくさんありますし、モラトリアムは特権ですからね。自分自身、学生時代にそういった考えに至らなかったのが、正直、残念でなりません。

一方で焦る必要もありません。40代でも50代でも起業はできます。僕がベンチャーキャピタルの一員として働いていたボストンでは、シリコンバレーと違い起業家の多くが業界のベテランの方々でした。当然、人生のステージによって取れるリスク量も、経験値による勝算も変化するでしょうから、期待リターン値が高いのであれば賭けてみるのも一つの手です。

一つだけ起業する前にしておくべきことがあるとすれば、それはスタートアップでトレーニングすることでしょう。2、3年でも構いません。許されるのであれば、もっと短くてもいいかもしれません。スタートアップが、なぜ、どうやって、成長しているのかを知ることは、自分が起業した時の大きな糧となるはずです。



【スタートアップとスモールビジネス】

「脱サラ」してラーメン屋をはじめることも立派な起業です(私の友人のお父様が屋台からタイで第二位の財閥を作り上げた話は感動的!)。ただ起業するなら、せっかくですからイノベーティブなビジネスアイデアを実現して、世の中を変えるチャレンジをしたいと思います。

起業家(アントレプレナー)という言葉には、一般的に広義の「事業を興す人」と狭義の「スタートアップをローンチする人」の二通りの意味を持っています。スタートアップとは、世の中に大きな変化をもたらす事業を文字通りぶっ放し(ローンチし)巨額のエクジットを狙う※企業のことです(※エクジットは必ずしも目的の中に入らない場合もありますが)。

起こした会社を単なるスモールビジネスにとどまらせないためには、破壊的なテクノロジー、革新的なプロセス、刷新的なデザイン、斬新なアプローチなど、何かしらのイノベーションを実現することが必要になります。

ではイノベーションはどのようにして起こすのか。500 StartupsのGeorge KellermanはSOY TRIPで、イノベーションは常識にとらわれず突拍子もないアイデアを実際にやってみることから生まれるのだと言っています。でも、ここで注目すべきは、イノベーションはテクノロジーに限定されないことです。

例えば、史上最年少で上場を果たしたリブセンスの村上さん。まだ創業間もないころにお会いしたっきりですが、当時伺ったお話では、恥ずかしながら、そのすごさが全くわかりませんでした。リブセンスが実現した本当のイノベーションは(と私が思うのは)、プレゼンには何も書かれていなかったSEOへのアプローチ方法だと気付かされたのは、それから随分あとのことでした。

また、この数年よく耳にするようになったリーン・スタートアップも、起業のハードルが低くなったことがもたらした大きなイノベーションの一つです。イノベーションによって、別のイノベーションが起こる。この連鎖を考えると無限に可能性が広がるようで、心が躍りますよね。

社会をよくするきっかけを作るような起業に、これから何度もチャレンジしていけたら素晴らしいと思います。

会うたびにそんな思いを新たにさせてくれる熱い男(僕の中で密かにスタートアップ界の松岡修造さんのようなイメージの)孫泰蔵さんにこのバトンを渡したいと思います。では孫泰蔵さん!よろしくお願いします!


砂川 大

株式会社ロケーションバリュー
代表取締役社長


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