コラム

スタートアップに求められるCFOの役割とは


早川 智也

プロジェクト・オーシャン株式会社
代表取締役

サポーター

2013/08/21 14:45



スタートアップが成功するための要因の一つに、良い経営チームが作れているかにあります。人間一人ではできることに限界があるのは言うまでもありません。起業家一人で対応できない部分を補うためにCFOやCTOという仲間を揃えてチームで起業する、これが理想の起業スタイルと私は考えています。

シリコンバレーの影響が強いメディアのコラムには、CEOはスーツではなくギークであるべきといつの時代でも議論されています。今回はCEOではなく、CFOのあるべき姿に焦点を当ててみます。

私は常日頃、スタートアップの起業家が求めるCFOの役割と、株式市場、金融機関、M&Aの買い手となる大手企業等から見るCFOの役割が大きくずれているように感じています。

・ベンチャーキャピタルと交渉し大規模な資金調達を成功させる。

・会社に有利な条件で大きなM&Aを取り仕切る。

・証券会社や監査法人をうまく使いこなしてIPOに会社を導く。

若い起業家の皆さんが想像するCFOのイメージはこんな感じではないでしょうか。

これらのイメージは決して間違えではありませんが、CFOがこのような業務に時間を費やすのはごく一部です。日常的な業務はもっと地味なもので、総務、経理、人事、労務といったバックオフィス業務がほとんどです。上場準備段階においては、社内管理体制の整備や有価証券届出書や報告書の作成業務が発生し、上場後はディスクロージャー対応やIRといった特殊なバックオフィス業務をこなさなければなりません。

そのため、対外的業務は得意だが社内業務は苦手もしくは興味が無い(もしくはその逆)、または、上場後の開示対応やIRの経験はないといったように一人のCFOではすべてを完璧にこなせないのが現実だと思います。

では、各ステージにおいてCFOはどのように対応していけば良いのでしょうか。

将来的にIPOを目指しているスタートアップでは、上場準備を進めるためにバックオフィスに業務に長けたCFOが望まれます。上場企業では各種法令や取引所のルールに則って様々な財務情報を対外的に開示する義務を負います。CFOはこの開示の責任者として株主や潜在的な株主が集まる株式市場と密接なコミュニケーションを取らなければなりません。このような株式市場や金融機関等とのコミュニケーション能力の如何によっては、株式市場を通じたエクイティ・ファイナンスや銀行等からのデット・ファイナンスの成否に大きな影響を及ぼすからです。

一方で、将来においてもIPOをする予定もなくプライベートカンパニーとして成長を追求するスタートアップは、バックオフィス業務でもなくIPOやM&Aの推進力でもなく、事業そのものの推進力を兼ね備えたCFOを採用すべきです。プライベートカンパニーは上場企業のような煩雑な財務情報の開示義務はありません。IPOを求められるようなVCからも資金調達をしないのであれば、事業から生まれるキャッシュ・フローが唯一の資金源になります。そのため、CFOという肩書きも意味をなさないほど、事業の推進に力を入れるべきです。

読者の方はお気づきかもしれませんが、どちらのパターンもCFOにはIPOやM&A、資金調達の能力を優先的には求めていません。これらの業務は冒頭でも触れたとおりCFOの業務のほんの一部にしか過ぎません。また、IPOには証券会社やコンサルタント、M&Aには投資銀行や財務アドバイザーといった専門家が多数存在します。必要な場合は、これらの専門家を使えばいいと思います。逆にこれらの専門家をうまく使いこなすことがCFOに求められる能力といえます。VCからの資金調達も、その成功の鍵はCFOではなくCEOである起業家本人にあります。VCは起業家が描くビジョン、事業計画そしてその人間性を見て出資するか否かを判断します。決してCFOの交渉力のみで資金調達できるわけではないのです。

このようにCFOは決して華やかな存在ではなく、あくまでCEOを影で支える女房役なのです。地味に見えますが、CEOが安心して会社の財布を預けられる、もしくは、CEOとともに事業を推進できるCFOこそスタートアップに求められるCFOといえるのです。

 

CFOの役割

①戦略立案への参画

・ファイナンス視点からの戦略の検証

・戦略実行に必要な資金調達等の財務戦略の立案、実行

・資金の適正配分

 

②戦略実行の促進

・予算、KPIに基づく損益管理と実行

・実行結果のモニタリング、分析

・改善アクションの検討・実行の率先

 

③統制環境の整備

・コーポレート・ガバナンスの強化、整備

・株主、債権者等外部ステークホルダーとのリレーションの構築

 

④会計報告の実施

・経営、ステークホルダー等へのタイムリーかつ正確な会計報告の実施

・他部門に対するサービスレベルの維持、改善など業務改善の維持と監視

・業務改革のためのBPRなどの取り組み

・労務、法務等、コンプライアンス体制の構築

 

⑤ディスクロージャー、IRへの対応

・有価証券報告書、決算短信等、法令や証券取引所のルールに従った適時開示

・機関投資家訪問や決算説明会開催等のIR対応

 

このコラムを衆議院議員の宮崎謙介さんにバトンを渡したいと思います。宮崎さんは、あるベンチャー企業で上場を経験され、その後ご自身も起業の経験も持たれた方です。今は衆議院議員として起業家創出や若者のキャリア教育の課題解決に向けて奔走されています。我々同世代の代表として、日本をどのように導かれるのかお話しをお伺いしたいと思います。

 


早川 智也

プロジェクト・オーシャン株式会社
代表取締役

三重県鈴鹿市出身。
関西大学大学院商学研究科(会計学専攻)修士課程修了後、2001年に大和証券エスエムビーシー(現 大和証券キャピタルマーケッツ株式会社)に入社。公開引受部にてインターネット企業を中心に、株式公開支援業務、証券取引所折衝業務に従事に従事。
2006年に独立し、IPO支援サービス等を提供するプロジェクト・オーシャンLLPを設立。
同LLPでは、「Partner with Entrepreneurs」を合言葉に株式公開コンサルティングサービス、ベンチャー支援サービス、財務コンサルティングサービスを提供。2009年にプロジェクト・オーシャン株式会社を設立し、現在に至る。


Comment_u